JAグループ京都が5年前から開始した「京野菜の世界ブランド化戦略」。パリ・ベルサイユ宮殿で「京野菜を使った晩餐会」を開いて以降、毎年、世界的な文化遺産を舞台に、京都産の食材を持ち込んで、数百人規模の大晩餐会を開き、国際的な注目度を高めてきました。
当初は、「世界三大料理の地」から情報発信を行い、2年前からは日本とロシアの経済協力、日本とEUとのEPA大枠合意といったタイミングで晩餐会を開催し、直接的なビジネスチャンスにつなげるなど、多様な戦略を展開してきましたが、6年目の今回は、世界で最も小さい国であるバチカン市国で開催。人口わずか800人余りながら、カトリックの総本山として世界12億人の信徒に大きな影響を与えるバチカン。
40カ国あまりの大使や外交団を前に、京都産の食材を「真の世界ブランド」としてどうアピールしたのか。晩餐会の前後にも密着し、世界戦略の全容をリポートします。
東京の皇居の3分の1あまりという小さな国・バチカン市国。政府はローマ法王庁で、住民はほとんどがカトリックの聖職者。5年前に第266代の法王となったフランシスコは、積極的な平和外交を展開。世界のカトリック教徒12億人だけでなく宗派を超えて「慈しみの心の大切さ」を説き、今世界で最も影響力のある人物のひとりと言われています。
それだけに、バチカン市国での晩餐会の開催は、世界の多くの国々で注目されることに。
国全体がユネスコの世界遺産になっているバチカン市国には、数多くの美術館があり、総称して「バチカン美術館」と呼ばれています。500年以上もの歴史があり、歴代ローマ法王の収集した美術品を、展示。その美術館の回廊が、今回の晩餐会の舞台となりました。バチカン市国史上、初めてとなる美術館での大晩餐会には、40あまりの国・地域の大使や外交団が集まり、バチカンからも枢機卿ら要人多数が参加。
なぜ京都の農産物は魅力的なのか、歴史的背景や文化的な価値、生産者や料理人が磨き上げてきた技・心を紹介する中で、「特別な一皿」を仕立て、320人の参加者にふるまいました。
晩餐会の開催に合わせ、バチカン市国があるローマで、京都をはじめとする日本産の食材の魅力をPRする「提案会」も開催されました。会場には、イタリアで活躍するシェフや料理関係のジャーナリストら多数が集まり、本物の和食の技と、京野菜や日本の食材の調理法等について、理解を深めました。