今回は、宮津市にある魚料理専門店「ぽん太」から番組をお届けします。昭和53年創業の「ぽん太」は、地元で獲れた新鮮な魚だけを使って刺身や寿司等を提供。2代目として腕をふるう寺崎さんも、毎朝自ら港まで出かけ、納得したものだけを仕入れ。天気を見極め、漁の在る無しまで見越して「こだわりの逸品」を揃えています。
一方、京都では漁業の現場でも、「こだわりの逸品」を創る取り組みが、続けられてきました。その代表格が「丹後とり貝」。半世紀も前から、漁業者と京都府の試験研究機関などが協力し、稚貝を量産する技術を開発。通常の「とり貝」より2倍以上大きく肉厚で柔らかなブランド品を作り出し、京都はもちろん、全国各地に出荷しています。
高品質な「丹後とり貝」を育てるためには、約1年、丹念に世話をしなくてはなりません。漁業者の情熱と技、一心に磨く技こそが真のブランドを生むことにつながるのです。今回は漁業の現場が生み出した至宝を、寺崎さんの磨き上げた技で調理して頂きます。また、自然と共に生きる智恵と技を、伊根町で山菜を収穫する、須川さん親子にも学ばせて頂きます。
創業当時にはまだ珍しかったオープンキッチンスタイルの店内。食材や料理へのこだわり、一心に技を磨くことのやりがいや喜びをおおいに語り合いました。
今回の番組の舞台となった魚料理の店「ぽん太」(宮津市島崎2019 0772-22-7110)
地元客はもちろん、観光のお客さんも多いという「ぽん太」。「せっかく宮津まで来てもらったのだから、ここでしか味わえない料理を」と、魚介はもちろん、米や野菜も地元産にこだわりそれぞれの持ち味を最大限に引き出す調理法を工夫しています。
「京のブランド産品」として、全国的にも名高い「丹後とり貝」。リアス式海岸の多い府北部では、ミネラル分の多い山水が海水に入り、ブランクトンが豊富に存在。他地域よりも大きくて甘味の強いとり貝が育ちます。ここに着目し、半世紀をかけ、安定的に生産できる育成技術が開発されました。
「丹後とり貝」は、舞鶴や宮津、久美浜等の沖合に「いかだ」を浮かべ、そこから吊り下げる形で育成されます。7月にコンテナに稚貝を入れ、翌年の初夏の出荷まで、1年近く。漁業者は、こまめにコンテナを掃除したり、生育状態によって貝を入れ替えるなど世話を重ね、大きく立派に育てていきます。
通常、港に上がった魚介類は、「せり」にかけて市場に出荷されますが「丹後とり貝」は、漁業者が自ら値段をつけて販売を行っています。磨き上げた技を、きちんと価格に反映、自ら販売先も開拓する中でブランドとしての高い地位を築き上げてきました。港に水揚げされた「丹後とり貝」は、おおきさ別に仕分けされ厳しい検品の後、販売されます。
山地の多い京都府では、昔から「春から初夏の旬を楽しむ食材」として、山菜が重宝されてきました。JAでも6月の半ば過ぎ頃まで山菜類の出荷を行っています。
子供の頃から山菜採りの技を鍛えぬいてきたという須川さん(写真奥)。中山間地の集落では、昔は農作業とともに山仕事をするのが当たり前で、薪拾いや山菜採りなど、1年を通じて山に入ることによって森の荒廃を防いできました。娘さんとふたり、自生する「ヤマブキ」を摘みながら、翌年の収穫のために、根を土に返すことも。自然とともに生きる智恵と技、その素晴らしさを教えて頂きました。
今回、寺崎さんに調理して頂いた一品。初夏という旬を感じつつ、甘味と柔らかさという「丹後とり貝」ならではの味わいを存分に楽しめる一皿です。