今回の夢追人は、京都府亀岡市の中川喬之(たかゆき)さん。滋賀県米原市の滝澤均(ひとし)さんを訪ねました。(リポーター:稲富菜穂)
【京都編】
10月末のとある日の朝、JA京都亀岡中部支店に集まった人たち。
台風21号で被害にあった農家さんのボランティア復旧作業に向かう皆さんです。
「皆さんの力強い支えをいただくことによって、被害にあわれた農家さんたちも、もう一回がんばろやないか、という力を出していただいている」力強くあいさつされるのはJA京都の高田己喜男常務。
そんなわけで今回は、台風被害にあわれた農家さん、中川喬之さんの農場にやって来ました。
おだやかな表情の中川さんですが、後ろのハウスを見ると...
骨組みのパイプがグニャグニャに折れてペシャンコにつぶれてしまっています...
京大を出て役所勤めから転身、新規就農を目指して研修4年目の中川さんにとって、去年建てたばかりのこのハウスは出発点のようなもの。大ショック...!!
ですが、いつまでも落ち込んでばかりもいられません。地域の先輩農家さんやJA職員のボランティアスタッフたちも時折、笑顔をみせながらテキパキと解体作業を進めます。
作業開始からおよそ3時間で、壊れたハウスはすっかり片付きました。
これでまた新しいハウスが建てられます。
率先して作業の指示を出していたのは地元の農家仲間たち。
向かって右は亀岡の生産者のリーダー・長澤忠夫さん。稲富リポーターのとなりは中川さんの農業の"師匠"並河幹夫さん。新人農家の中川さんに、おいしい野菜の作り方や、稼げる農業のノウハウなんかもアドバイスしてくれる頼もしい先輩です。
同じ地域の仲間ということもありますが、なんといっても「彼がいっしょうけんめいだから」と並河さん。
でも、休憩時間には「しっかりせえよ!」とキビシイ指導も。ありがたい愛のムチです...!
ハウスは1棟つぶれてしまいましたが、畑の野菜たちは青々と元気に育っています!
並河師匠いわく「下ばっかり見てても何もできん。前を向かな」
ですよね。前を向いていきましょう!
「命の糧になる、カタチのあるものを作ることにやりがいを感じて」農家になるのを決めたという中川喬之さんの夢は...
「ヨメさんに『娘を高校までは行かせられるんやろな』と言われるので、留学でもなんでもさせてやれるぐらい稼ぎたいと思います!あとは農業が暇な冬の時期に南米一人旅をぜったいにしたいと思います」
【滋賀編】
滋賀県米原市にやって来た稲富リポーター。後ろにそびえるは雄大な伊吹山。
この山のふもとらへんで大人気の柿をつくっている農家さんをお訪ねします!
伊吹果樹組合組合長の滝澤均さん。
すらりと背が高く小顔です...!
作っているのは「伊吹平核無柿」。「いぶきひらたねなしがき」と読みます。
国の食糧難対策の一環として、今からおよそ65年前に栽培がはじまったそうです。
山のふもとを切り拓いた柿畑。ずらーっと向こうの方まで柿・柿・柿・柿...!
組合全体で商品にバラつきができないよう、このカラーチャートを目安にして収穫します。
収穫時期以外にも、枝を整える剪定や摘蕾(てきらい)、摘果と、かなり手間ひまがかかります。向かって左側はしっかり手入れしてある柿の樹。右側は離農して手がかけられなくなった柿の樹。こうして見比べると、ふだんの手入れの大切さが一目瞭然ですね。。
体力も時間もかかります。高齢で離農される方も多く、最盛期には230軒いた生産者も今では26軒に減ってしまったそうです。昼間は別の仕事をしながら出勤前と仕事帰りに果樹園の世話をする人も多いそうで...ご苦労様です。
ところでこの伊吹平核無柿は渋(しぶ)柿。どうやって甘~くするのかご存知ですか?その答えはこちらの指導センターにあります。
後ろに見えている緑色のカーテンを下まで降ろすと密閉されたスペースができます。
室(むろ)といいます。
その室(むろ)の中に収穫した柿を入れて、炭酸ガスを充満させます。
そして3日置いておくと、渋さの元であるタンニンが、口に入れても水に溶けない「不溶性」に変化して"渋が抜ける"=甘くなるんです。
(ちなみにご家庭だと度数の強い焼酎などのアルコールでも脱渋=渋抜きができるそうです)
教えてくださったのは湖北農業農村振興事務局の青木映里香さん。
勉強になりました!
で、これが脱渋して甘~く変身した伊吹平核無柿☆
見るからにおいしそう~
ちなみに、ゴマ模様のちょっと黒っぽい柿は、アルコール入りの袋をかぶせて樹上で脱渋するように育てたもの。伊吹山にちなんだ「霊峰」の名前で売り出しを始めました。(※霊峰は予約注文販売です)
どちらもタネが無いので食べやすく、そして、甘ぁ~~~い♪
「霊峰」は収穫してから脱渋したものよりも歯ごたえがシャッキシャキです。
お母さん方にどちらが好きか聞いてみると、「歳とって歯が弱いから、、ふつうの方かな(笑)」
ちなみに稲富リポーターはシャキシャキ派だそうです。
「伊吹の柿はまだか?」と毎年楽しみに待ってくれるファンの声がうれしい。という滝澤さんの夢は...「伊吹の平核無柿は65年ぐらいの歴史があります。樹齢65年でも本当においしく大きな実をみのらせてくれます。これが100年後にどうなっているのかな、と。もっといい柿、もっとおいしい柿ができているんじゃないかな、というのを見てみたいなというのが私の夢です」
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