明治3年創業の馬場染工業の五代目。黒紋付を染める伝統の技術を生かして、洋服を黒く染め直す事業を展開している。先代の父親は昔気質な人でとにかく厳しかった。姉が高校を卒業する時に、勝手に父が就職先を決め、大学に行けなかった姿を見て、同じようになるのは嫌だと、大阪の服飾専門学校のパンフを見せて洋裁をやりたいと父親に必死でプレゼンして進学。卒業後は、テキスタイルデザイナーとしてアパレルの商社に就職。下着や、傘のテキスタイルをデザインする仕事に携わっていた。28歳のときに結婚。寿退社で仕事を辞めて実家の仕事を手伝っていた。そんな時に父親のガンが発覚。ある日、父親が「ワシが死んだら、もう誰も家業をやるもんはない。」と、代々引き継いできた大切な黒染めの染液を捨てだした。その時、とっさに「私がやる!」とはずみで言ったことがきっかけで家業の黒染めを継ぐことに。五代目として力を入れたのが洋服の染め替えを事業。依頼される洋服は、もう一度、着たいと思う思い出の洋服。喜んでくれるお客さんの声が嬉しいと大変な仕事だが、一つ一つ思いを込めて染め替える。今は20歳の次男が、作業を手伝うように。代々引き継いだ黒染めを未来に残したいと日々、技術を磨いている。