嵐山にある京象嵌専門店「中嶋象嵌」の三代目。中嶋さんが作るのが金や銀などの金属を地金に打ち込み柄を作る象嵌。中でも特徴的なのが、地金をくりぬいて作る、透かしの象嵌。中嶋象嵌の初代は祖父。通っていた小学校のすぐそばに工房があり、学校終わりに、祖父の職場に来るのが好きだった。職人肌の祖父は、邪魔をすると怒られるため、そばから見るだけだった。子供ながらに、この仕事をするんじゃないかと思っていた。大学まで進学するものの、勉強が今後の仕事に繋がるかわからなくなり、中退。19歳で家業に入り、祖父の元で象嵌職人として働く。祖父は自分の働く姿を見て学べというタイプで、ほとんど教えてくれなかった。数少ない教えが、「失敗してもいいから、ビビらずやれ」。すべてのことにビビりながら、祖父任せになっていた自分に、失敗して学べと教えてくれた。新しい象嵌の形はないかと、模索し、見つけたのが、今の主流商品の「透かし」。最初は祖父から猛反発されたが、展示会で好評で、祖父も納得してくれた。そんな矢先に祖父が亡くなる。自分が何とかしないと、会社も象嵌の技術も途絶えてしまうと、我武者羅に頑張り、何とか持ちこたえることができた。今後は、象嵌の技術や文化を残していくためにも、若い人達にも、関心を持ってもらえる商品を作っている。